つれづれタイムズ

野に下りたクマの随筆

おばあさんに席を譲るということ

 

今日は一人暮らしのための部屋の内見。晴れてるけど涼しくて内見にうってつけの日だった。

 

都内に向かう電車で、たまたま僕は座ることができた。最高だ。ポチクリ携帯をいじっていたら、途中でおばあさんが乗ってきて、僕の前で立っていた。

 

 

僕は元来良心の塊のような人間なので、高齢者に席を譲る人間だ。しかし、ここである思いが僕に生じる。

 

「また断られたら、恥ずかしいなぁァァ」

 

 

この2か月で、3回くらい席を譲る行為をしたが、どれも断られてしまっていた。そのたびに、「ア、ソッスカ。。」と力なくそのまま腰を下ろしていた。その時の無力感、悲壮感たるや。乗客すべてが、僕のことを嘲笑っているのではないかと思うほどのマイナス思考が働いてしまう。

 

 

そんな経験があって、僕は二の足を踏んでしまう。しかしこのまま、健康男児高齢者の前でふんぞり返ってしまっていてはよくない。僕の精神衛生上よくない。そして、ある駅に着いたタイミングで、僕は意を決しておばあさんに声をかけた。

 

「ア、セキドゾ」

「あ、いいですよ~大丈夫ですよ~」

 

 

出たよ、また出た。大丈夫おばあちゃん。あなたもか。一体この世に何人いるんだ。勘弁してくれ、もうあの思いをしたくないんだ。目の前の幸せそうなカップルに、嘲笑われたくないんだ。

 

 

「イヤ、ボクモウスグナンデ」

 

 

過去の経験を糧に、進化した僕はそう言い少し強引めにおばあさんを席に促す。おばあさんは少し嬉しそうに座ってくれた。

 

 

 

勝ちだ。完全勝利だ。僕は満足感でいっぱいだ。その後一日、僕は気分よく過ごせたのであった。

 

見知らぬおばあさん、ありがとう。